いずれにせよ、この映画は時計以外の時間的な要素もおもしろい。2020年10月のパンデミック最盛期に、11日間という短期間で撮影されたのだ。映画時計製作開始と同時に、フークワ監督は新型コロナウイルスに罹患し、全編をバンからズームを使って遠隔指示することになった。9-1-1コールを使っての電話の演技が多いので気づかないと思うが。ベイラー役のギレンホールは、『ナイトクローラー』のカオスな演技を彷彿とさせるようなパフォーマンスだ。全編が、ロサンゼルスで猛威を振るう山火事が巨大なテレビ画面に映るコールセンター内で撮影されている。
ベイラーが誘拐事件に巻き込まれ、警察官としてのスキルを駆使して、机上で電話とパソコンだけを頼りに事件解決に挑むという筋書きだ。退屈に聞こえるかもしれないが、『大統領の陰謀』のような、1本の電話やメモ帳への走り書きが重要なアクションとなる映画と同様の動きとドラマがあるのだ。我々はずっとベイラーと一緒で、ほかのことはすべて我々の想像に任される。これは監督と脚本家、両方の能力の証だ。
カメラはほとんどベイラーだけに固定されているため、彼の手首がよく見え、したがって彼の腕時計もよく見える。カシオのG-SHOCK GA110-1Bだ。55×51.2×16.9mmと大型のG-SHOCKならではのブラックラバーに、メタリックでインダストリアルなデザインのダイヤルを組み合わせている。私は以前、法律関係の仕事をしており、警察の扱う事件で何度も法廷に立ち会ったが、この時計はまさに彼らが身につけているような時計だと言える。巨大で、高性能で、耐久性があり、まさに警察官が必要とするものなのだ。もちろん、ベイラーはもう現場に出る警察官ではないので、この時計は彼が失ったものすべてを思い起こさせる役割を担っている。
この映画は、すべてが暗闇に近い状態で撮影されている。そのため、この時計の姿をはっきりと見ることはできないが、場面ごとにそのシルエットを見ることができる。ベイラーは喘息持ちで、ストレス解消のために常に吸入器をいじっている。カメラはしばしば彼の手のクローズアップに切り替わり、時計を見る十分な機会を与えてくれる。
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